2023.10.13
#4 蝉の抜け殻のこと
すっかり季節が秋へと移り変わり始めたつい先日。
夏の盛りには気が付かなかったのに、いつも歩いている道で蝉の抜け殻がたくさんついている木を発見。
その木を見て思い出すことがありました。
隣町にある母方の実家の真横には、小さい神社と、滑り台、ブランコ、鉄棒だけがある小さな境内がありました。
母方の祖父母のことも、二人が住む平屋のことも大好きで、ひとりだけでもよくお泊まりしに行っていたほど。
その境内には遊具の他に小さな祠と、立派な四、五本の桜の木があり、夏になると、それこそ桜の木だけでは足りず、神社本尊にまで無数の蝉の抜け殻がくっついていました。
地面には幼虫が這い出てきた穴もたくさん。
弟たちとビニール袋を片手に、蝉の抜け殻集めもしたり。
それでも翌日にはまた新たな抜け殻たちがあり、
一度は動く様を目の当たりにしたいものだと思っていました。
そんなある日。
夜の公園は、同じ年頃の子供たちが遊ぶ賑やかだった場所とは別世界の静寂。
皆が寝静まった真夜中に目が覚めた私は、今耳をすませば、幼虫たちがついぞ這い出、羽化すべくよじ登る為に動くカサカサカサ…と云う音が聞こえるんじゃないかと思い、天上の一点を見つめ集中したのですが、そこは遊び疲れた子供。
気付けば朝なのでした。
耳をつんざくほどの蝉時雨の中朝食を食べながら、
“目が覚めた時、カサカサって聞こえた気がするんだよなぁ”
と祖母が炊いてくれた少し柔らかめのご飯を食べながら一瞬思ったこと。
そんな蝉の抜け殻の思い出です。