2024.01.05
#16 胡桃のこと
我が家には祖父が考案したお餅のタレ、通称〝胡桃〟がある。
簡単に言えば、みたらし団子のタレに、擦った胡桃を混ぜたものって感じのイメージだけど、実際は砂糖醤油、味の素、テーブルコショウ、レモン汁で味付けする。
胡桃を炒り、割り、実をほり、すり鉢で擦る。
この作業を必要とするので、かなり手間のかかるタレ。
味付けは年夜の12月31日にする。
それまでに実をほり出しておかねばならず、それは私達、姉弟の勤めだった。
胡桃を炒る匂いは実に芳ばしくいい匂いがする。
学生の時分、年の暮れに帰宅し玄関を開けた途端、胡桃を炒った匂いと、ガラガラガラガラと祖母が鍋で胡桃を炒る音が聞こえると、〝ああ、お正月が来る〟と不思議な高揚感を覚えた。
割った胡桃を、炬燵に入りテレビを見ながら、千枚通しを使ってほり出す作業は好き。
今では、炒る作業は母が、擦る作業は弟達と父(大きなすり鉢なので、抑え方と擦る方の二人必要)が行う様に。
擦り終わったら、調味料を加え、何度も味見を重せねて完成となる。
祖父は意図した訳では無いだろうけど、一年の最後に皆で参加する家族行事を作ってくれたことは、大した遺産だわ、と思う。
何度も味見を重ねて完成する胡桃ダレは、本当に美味しい。
ちなみに、コショウもレモン汁も驚かれるほどたっぷり入れる。
結構刺激的なタレでもある。