2024.12.13
#65 大人な児童文学のこと
目にとまったこの本のことを話します。
表紙の色使いが、近づくクリスマスを連想させたからでしょうか。
出会いは小学校の図書館。
今でも並んでいた場所を覚えています。
人気エリア(ズッコケ三人組シリーズとか学校の怪談シリーズとかが並んでる)とはずいぶん離れた場所にありました。
ミステリーなのか、ホラーなのか、コメディなのか、シリアスなのか、ファンタジーなのか?
背表紙のタイトル「おとうさんがいっぱい」からは想像が出来なくて、手にとりました。
そうしたならば、表紙の絵を見ても謎は深まるばかり。
興味をそそられ、なんとなく不穏な空気を携えたこの本を借りることにしました。
全部で5つの物語が入っています。
いやはや。
どの作品も不思議と不気味が入り混じった、でも妙に癖になる経験したことのない世界観。
忘れられなくて、もう一度読みたくて、大人になってから買いました。笑
ちなみに私が一番好きな作品は、一番最後に収録されている〝かべは知っていた〟。
自主的に壁の中に逃げ込んだお父さんが出て来られなくなっちゃって。
それを小学生の主人公だけが知っていて、会話も出来ちゃうんだけど、しばらくたったある日、そのアパートは取り壊しが決まっちゃって…
と、ざっくり云うとこんなお話。
全然違うんだけど、江戸川乱歩の「人間椅子」が頭を過ぎります。
児童文学の枠に納めていいの?
と思うほど、奥行き深い作品。
児童文学らしからぬ挿し絵もすんごく好み。
そして読後のあのいい知れぬ感覚。
子どもだけが楽しむのはもったいない作品です。